DE ROSA SETTANTA インプレッション 積み上げた70年の最高傑作

イタリアンロードの真髄 DE ROSAの系譜
1953年、ウーゴ・デローザによって創業されたDE ROSA(デローザ)はイタリア・ミラノ発の伝統ある老舗ブランドです。エディ・メルクスを始めとして数多くの名選手に愛された歴史を持ち、彼らの情熱は今なおブランドの中心に生きています。そんなDE ROSAは2023年に70周年を迎えました。その節目を記念する特別モデルとしてSETTANTAを発表。SETTANTAは70年に及ぶDE ROSA技術の集大成であり、これまでにない革新と伝統が融合されたロードバイクです。
特徴とデザイン
SETTANTAの最大の特徴は、3種類のカーボンクロスのレイアップにあり、最たる注目点はリアトライアングルとシートチューブで、ここには適切な剛性の12Kカーボンクロスを使用。そしてフロントに向けて1Kカーボンにフェードアウトさせる構造です。
端的にいうと「後ろはがっちり、前はしなやか」ということです。リアは剛性を高め、ライダーのパワーロスを最小限にし安定感を出し、フロントはしなやかにしてハンドリングを軽く、衝撃をいなし快適な乗り味を可能にしてくれます。実際にリアバックはカーボン地のままで仕上がっており高級感があります。またフレーム重量は公式で730g(54.5サイズ)とかなり軽量で、32㎜幅までのタイヤクリアランスを確保しています。
DE ROSAバイクには共通したコンセプトがあり、空力・軽量・剛性・サイズ展開・トータルバランスを高水準で整え、そしてそこに「エレガント」が加わります。2015年よりパートナーシップを結んだ「Pininfarina」がデザインしたSETTANTAも造形美と機能美が高い次元で融合し、さらに特別なオーラを放つモデルです。また2023年に残念ながら旅立ってしまったウーゴ・デ・ローザ氏が最後に監修した特別なモデルでもあります。
光の加減で、明るいオレンジと濃い目の赤に近いオレンジ部分に見えていると思いきや、しっかりとグラデーションをつけて塗分けられています。またPininfarinaのロゴが入っているチェーンステーやシートチューブなど立体的なフレーム形状になっていて、さらに塗装で陰影をつけるなど、細かい部分での手の込みようがDE ROSAの妥協の無いモノづくりを表しています。
DE ROSAのロゴ部分は艶アリでそれ以外のフレーム部分はマット塗装。シンプルなだけに簡単そうに見えて、いかに塗装に手間をかけているかがわかる部分です。
ファーストインプレッション
初めてSETTANTAに乗った瞬間に感じたのが「驚くほど静かな剛性感、かつ優しい乗り心地」です。踏み込んだ瞬間はリアの剛性の高さゆえに反応性が非常に高く感じました。特に登りでは他ブランドでは「ヒルクライムバイク」と謳っているようなバイクに近い軽快さを感じます。しかし、セオリー通りであれば、剛性の高さゆえに手や腕に返ってくる衝撃があるはずなのに、それらがわずかなのです。不快な衝撃を前三角のフレーム部分とフォークがいなしてくれている感じがしました。これはライダーの疲労を最小限にしてくれるだけではなく、乗っていても「安心感」を与えてくれる大きなメリットだと思いました。
また走り始めてから最後まで感じたのはバイクとの一体感が強くあることです。乗り慣れているわけでないバイクなのに、まるで自分の意志をバイクが読み取ってくれるようなフィーリング。それでいてニュートラル。速度域や路面状況を問わす、安定した走りを見せてくれるのが印象的でした。
ここまで書くと特筆すべき良さのようなものがわかりにくいかもしれませんが、明らかに他のバイクとは違う「尖った部分=特徴」を持ちあわせています。
各社ハイエンドバイクというものは総じて何かしら尖った部分やクセのようなものがあります。このSETTANTAもそういった意味ではしっかりハイエンドバイクだと思わせるフィーリングを感じさせてくれます。
スプリント
SETTANTAのスプリント性能は間違いなくトップレベルです。しかし、他の性能とは志向の違いを感じました。これは乗ってみて実際に感じて欲しいところですが、昨今のハイエンドバイクは力強く踏み込み、前に進む加速を得る代わりに、全身に疲労が突き抜けていきました。SETTANTAにはそれがないのです。踏み出して加速しても「まだいける」と思わせてくれます。良く言われる表現としては「バネ感がある」というものでしょうか。クロモリとまではいかないものの、このわずかなタメにタイミングが合うことでグイグイっと加速していく感じが、先の「まだいける」という感覚になるのだと思います。ヒルクライムで「あと一秒でもいいから縮めたい」、クリテリウムで「前を抜かしたい」という場面でこれは大きなアドバンテージになりそうです。
ヒルクライム
DE ROSAにはヒルクライム性能にも妥協はありません。登りも軽やかに登るバイクです。フレーム重量自体が軽いこともありますが、先述した通り、リアの剛性が高いことから出力をロスすることなく登ってくれる印象が強いです。そして、この推進力への変換の懐が広いと感じました。試しに肩に力をいれ、雑にペダリングをしたのですが、思ったより減速せずに進んでくれました。ヒルクライムなどでは最後にどうしてもフォームが崩れてしまうこともありますが、このバイクなら最後まで寄り添うようにゴールまでともに進んでくれると思います。
平地巡行
いわゆる他ブランドにおけるエアロフレームのように、空力の良さをアピールしているモデルではありませんが、SETTANTAは高速巡行においてもエアロダイナミクスを意識したフレーム形状が空力面で効果を発揮してくれます。高速域では風に抵抗するのではなく、風の中をすり抜けていくような、流れる感じがしました。試乗車としてお借りしているためホイールはZONDAでしたが、もう少しハイトの高いBORA WTOのようなカーボンホイールに変えたらさらに良くなると思うと、デメリットはあまりないというのが正直な感想です。
コーナリング
コーナリングにおいてSETTANTAは、とにかく「素直で安心感を与えてくれる」印象でした。レースモデルのバイクだと反応性を重視して挙動がクイックになることが多いですが、SETTANTAにはそれがありません。踏み込んだ入力に対してはロスなく反応してくれますが、クイックさはなく、常に自分が思い描くラインを進むことができます。
車体全体の剛性がバランスよく、かつハイレベルに組まれている事から、スピードを乗せたままでも安定してコーナーに進めることができます。ヒルクライムをすれば必ず下りがあります。SETTANTAはしっかり追い込んだ後の状態でも、安心・安全に帰路につかせてくれます。
総評:デザインと機能が融合した気持ちの良いバイク
実は試乗が終わってから気づいたのですが、今回試乗したSETTANTAにアッセンブルされていたのはアルミホイールのZONDAにクリンチャータイヤという組み合わせでした。
普通であればフレーム剛性の高さをダイレクトに感じても良いはずなのに、ファーストインプレッションにも書いたように、驚くほど優しい乗り心地でした。
フロントのしなやかさがここまで影響するとは新たな発見でした。不思議なことにリアの剛性は高く、反応性も十分に高い。それでいて臀部にかかる突き上げ感も少なかった。ヨーロッパではステージレースにて、何日もかけて走ることが多くあります。SETTANTAはそんな過酷な状況にも対応してくれる懐の深いバイクでした。
総じて言えば、リアからフロントにかけての剛性のバランスや味付けの変化が絶妙すぎる。しかもそれをしっかりデザインと共存させているのがこのバイクの最も秀逸で評価すべき点だと思います。
ここまで作りこまれているのであれば、価格にも納得できる、そんな1台です。
最後に
SETTANTAは、単なるハイエンドレーシングバイクではありません。そこには70年にわたりロードバイクを作り続けてきたDE ROSAの哲学と誇り、そして未来への革新が込められています。力強さ・しなやかさ・美しさ・上質さ、そのすべてをハイレベルに組み上げたSETTANTAは見るものの心を動かし、ライダーの感性に応えるまさに「生きた芸術品」であるといえます。
ただ乗って走るだけではなく、機材以上の価値や芸術性を求めるサイクリストにこそ、ぜひ一度試乗し自分の体でそれを感じてほしい。SETTANTAはサイクリストの問いに答えてくれるロードバイクです。
THE BASE南大沢店ではSETTANTAを含むDE ROSAのロードバイクを取り扱いしております。
在庫状況などはWEBサイト内「商品」ページにてご確認いただけます。
※定期的に在庫状況は更新しておりますが、多少のタイムラグがございます。実際の在庫状況等は直接店舗までご確認ください。